整備工場の効率化というと、リフトや診断機のような設備投資を思い浮かべがちです。ところが、日々の時間を食っているのは、伝票の書き写しや確認の電話のような、記録に残らない細かい作業の積み重ねです。人を増やさずに同じ台数をこなすには、まずこの「見えない時間」を削るのが近道になります。この記事では、多くの整備工場で共通して効果が出やすい5つの改善を、着手しやすい順に並べました。事務所の外で起きている手間にも目を向け、整備システムを外で使う方法にも触れます。
整備工場の効率化で最初に見るべき「見えない時間」
整備士の作業時間は伝票や工賃で把握できますが、その前後にある時間は誰も記録していません。受付票を伝票に書き写す時間、事務所に整備履歴を問い合わせる電話、作業場から事務所まで品番を見に行く往復、月末にまとめて作る請求書。1回ごとは数分です。それが毎日、全員分積み重なります。
こうした時間は「忙しい」という感覚としてしか表に出てきません。数字がないのです。だからこそ、効率化は大きな改革より、毎日必ず起きる小さな作業から削るほうが確実に効きます。次の5つが代表です。
整備工場の効率化は、毎日起きる小さな作業から削るのが確実
整備工場の効率化で効果が出やすいのは、設備投資より、伝票の書き写し、事務所への確認電話、書類の手書き、車検案内のリスト作り、部品の品番探しといった毎日発生する小さな作業です。これらは工賃や作業時間として記録されないため、どれだけ時間を取っているかが見えにくく、「忙しい」という感覚だけが残ります。着手の順番は、導入した日から毎日効く二重入力の解消と確認電話の削減が先で、書類のシステム作成と車検案内の仕組み化がそれに続きます。国土交通省によると、車検の台数は3月に約389万台と、月平均の約281万台を大きく上回ります(2019年から2023年の平均)。繁忙期の負担を減らすうえでも、平常月のうちに細かい作業を減らしておく意味があります。
改善1:同じ情報を二度書いている場所を探す
受付票に書いた内容を伝票に書き直す。伝票の内容を請求書に転記する。整備で登録した顧客を、販売側の台帳にもう一度登録する。どれも二度手間です。二重入力は時間を取られるうえ、転記ミスの温床にもなります。しかも、ミスは請求の段階まで見つかりません。
- 1台の入庫から納車、請求までに、同じ情報を何回書いているか数える
- 顧客、車両、整備履歴、伝票、請求が1つのデータでつながっているか確認する
- 整備と車販で別々のソフトを使っているなら、まとめられないか検討する
顧客管理、車両管理、伝票作成、入金管理、請求書作成が1つの整備システムでつながっていれば、入力は原則1回で済みます。中古車販売もしているなら、車販ソフト(車両販売システム)の機能まで同じシステムで持てるかが分かれ目です。
数え方は簡単です。入庫から請求までの流れを紙に書き、氏名、車台番号、走行距離、作業内容のような項目ごとに、どの書類に何回書いているかを正の字で記録します。3回以上書いている項目があれば、そこが最初の改善対象です。
改善2:事務所への確認電話をなくす
引き取り先や部品商とのやり取りの途中で、事務所に電話して整備履歴や品番を調べてもらう。この時間は2人分です。フロントが電話で手を止めれば、来客や予約の電話に出られなくなります。
仮に1回3分の確認電話が1日10回あれば、月20日で10時間です。2人分なので、止まっている作業時間は20時間相当になります。自社で何回起きているかは、1週間メモを取れば見えてきます。数えてみると驚くはずです。
- 1週間、確認の電話が何回あったか数える
- 外出先のスマートフォンやタブレットから、整備履歴、顧客情報、残高を確認できるようにする
- 顧客や部品商への発信を、個人の電話帳でなく会社のデータから行えるようにする
整備システム・整備ソフト DREAM POWER なら、顧客、車両、車歴をスマートフォンのブラウザで見られる スマホで車歴 があります。アプリのインストールは不要で、複数の端末から同時に閲覧でき、画面から顧客や登録した部品商に電話をかけられます。閲覧専用です。外で誤ってデータを書き換える心配はありません。方法ごとの比較は 整備履歴(車歴)をスマホで確認する方法 にまとめています。
確認電話は外の人と事務所の人の2人分の時間を使う
整備工場で見落とされやすいロスが、外出先から事務所への確認電話です。引き取り先で前回の作業内容を聞かれたとき、部品商に発注しようとして品番がわからないとき、外の人は事務所に電話し、事務所の人は手を止めて画面を探します。1回3分でも2人分の時間が消え、事務所が接客中なら折り返し待ちになり、夜間や休日は確認そのものができません。対策は、整備システムのデータを外から直接見られるようにすることです。スマホで車歴は、顧客、車両、車歴をスマートフォンやタブレットのブラウザで閲覧でき、アプリは不要、データは1日1回自動で同期されます。まず1週間、確認の電話の回数を数えると、改善の大きさを見積もれます。
改善3:車検の申請書類の手書きをやめる
まず書類です。継続検査申請書、重量税納付書、自動車検査票、主要諸元表。こうした書類を手書きしていると、1台ごとの時間に加えて、書き損じによる書き直しが発生します。
- 自社で手書きが残っている書類をすべて洗い出す
- 整備システムの申請書類作成機能で出せるか、帳票の名前で突き合わせる
- 出せない書類があれば、その書類だけのために別の運用が残っていないか確認する
手書きをやめる効果は時間だけにとどまりません。字の癖で読み違える、記入欄を1行ずらす、といったミスも減ります。整備システムに入っている車両情報から書類を出せば、同じ情報を何度も書く必要がなくなり、改善1の二重入力の解消ともつながります。
2023年1月からは車検証が電子化され、有効期間や所有者の情報は券面でなくICタグに記録されるようになりました。券面を見ただけでは満了日を確かめられません。満了日や車両の情報を整備システムに正しく持っておくことが、書類作成と車検案内の両方の土台になります。
改善4:車検案内を仕組みで回し、入庫を平準化する
整備工場の売上は、車検や点検のリピートに支えられています。満了日が近いお客様に案内を出せているかどうかが、そのまま入庫台数に跳ね返ります。ところが手作業でリストを作ってハガキを出す運用は、忙しい月ほど後回しになります。そして案内が遅れます。
2025年4月1日からは、車検証の有効期間満了日の2か月前から車検を受けても、残りの有効期間を失わないようになりました。改正前は1か月前からでした。期間は倍です。国土交通省は、年度末に車検が集中して予約が取りづらく、整備士も残業や休日出勤に追われていることを改正の理由に挙げています。案内を早めに出せば、3月に集中しがちな入庫を1月や2月に分散させる相談がしやすくなります。
- 車検満了日から自動でリストが出る状態にする
- 案内の手段をハガキ、電話、SMSで使い分ける
- 案内した、しなかったの記録を残し、次回に活かす
早めの案内が鍵です。案内の組み立て方は 車検管理・車検案内を仕組みにする方法 で詳しく扱っています。
車検の2か月前ルールは入庫の平準化に使える
2025年4月1日から、車検証の有効期間満了日の2か月前から満了日までに車検を受ければ、残りの有効期間を失わずに新しい車検証へ更新できるようになりました。改正前は1か月前からで、国土交通省は年度末の混雑と整備士の残業・休日出勤を改正の背景に挙げています。同省の資料では、2019年から2023年の平均で3月の車検台数は約389万台、月平均は約281万台です。整備工場にとっては、満了日の2か月以上前に案内を出し、繁忙月の入庫を前倒しで受けられる余地が広がったことを意味します。そのためには、満了日から案内対象のリストが自動で出る状態と、誰にいつ何で案内したかの記録が要ります。
改善5:部品発注の待ち時間を短くする
部品待ちは痛手です。作業が止まると、ピットの回転が落ちます。前回取り付けたものと同じ部品を手配したいのに、品番が事務所のパソコンの中にあるせいで発注が遅れる。よくあるロスです。
- 作業中のスタッフが自分で前回の品番を確認できるようにする
- その場から部品商へ電話できる導線をつくる
- 見積の段階で部品の価格を確定できるようにしておく
作業場のスマートフォンで前回の品番を見て、そのまま登録した部品商に電話できれば、手袋を外して事務所まで歩く必要はありません。これで十分です。具体的な手順は 作業場で前回使った部品の品番を確認する方法 で紹介しています。
整備工場の効率化を進める順番と測り方
| 優先度 | 改善 | 効果が出始める時期 |
|---|---|---|
| 高 | 二重入力の解消 | 導入した日から毎日 |
| 高 | 外出先からの整備履歴の確認 | 導入した日から毎日 |
| 中 | 申請書類のシステム作成 | 操作に慣れる1〜2か月後から |
| 中 | 車検案内の仕組み化 | 案内が一巡する数か月後 |
| 中 | 部品発注の短縮 | 導入した日から |
測らなければ、効果は語れません。「なんとなく楽になった」で終わらせないために、導入前に数字を取っておきましょう。
- 1台あたりの受付から請求までの事務の時間
- 1日に発生する事務所への確認電話の回数
- 作業場から事務所へ品番を見に行った回数
- 車検案内を出した件数と、案内からの入庫の件数
- 月末の請求処理にかかった日数
3か月後に同じ項目を測れば、改善の効果を具体的に説明できます。次の投資を決める材料にもなります。営業担当が外で見積まで作りたい場合は、整備システムを入れたノートパソコンを VPN の暗号化通信で持ち出す お出かけDP も選択肢です。
よくある質問
- 整備工場の効率化は何から始めればよいですか。
- 毎日必ず起きる二重入力と、事務所への確認電話から始めるのが確実です。まず1週間、同じ情報を書いた回数と確認の電話の回数を数えると、どちらが大きいかがわかります。
- 車検は満了日のどれくらい前から受けられますか。
- 2025年4月1日から、有効期間満了日の2か月前から満了日までに受ければ、残りの有効期間を失わずに更新できます。それ以前は1か月前からでした。
- 整備ソフトのおすすめの選び方はありますか。
- 効率化の目的に合わせて、二重入力をなくせるか、申請書類を出せるか、外から整備履歴を見られるかを確認します。比較の項目は 自動車整備ソフト・整備システムの選び方 にまとめています。
- 外回りの営業担当が見積を作るために会社へ戻っています。
- 整備システムを入れたノートパソコンを持ち出すお出かけDPなら、営業先で車両在庫の確認から見積作成までいつもどおりできます。既存のパソコンを持ち出せるようにする場合、追加ライセンスは要りません。
- 外出先で整備システムを使うと情報漏えいが心配です。
- スマホで車歴はブラウザで閲覧する仕組みで、ID とパスワードでログインし、編集や追加はできません。ノートパソコンを持ち出すお出かけDPは VPN の暗号化通信で接続し、設定は日本カーネットがサポートします。
出典・参考資料
- 国土交通省 報道発表「来年4月より、車検を受けられる期間が延びます」(令和6年6月25日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001749658.pdf - 国土交通省 報道発表「道路運送車両法施行規則等の改正について~車検証電子化による券面記載事項の変更・記録等事務の委託手続等を定めました~」(令和4年5月20日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha06_hh_000131.html - スマホで車歴(MobileDP)・お出かけDP 機能説明(日本カーネット提供資料)
記載内容は2026年10月8日時点で公表資料を確認したものです。機能・提供内容は整備システム・整備ソフト DREAM POWER の更新で変わることがあります。
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