点検整備記録簿は、法定点検を実施した記録として作成・保存が求められる書類です。日常的に書いているのに、作業区分の記号の意味を正確に説明できる人は意外と多くありません。インターネット上には誤った解説が数多く出回っており、それを参考にすると記載を誤ります。
この記事では、運輸局が公開している記載要領と実際の記録簿様式に基づいて、記号の意味と別表の対応、保存期間を整理します。
作業区分の記号 早見表
| 記号 | 作業区分 | 意味 |
|---|---|---|
| レ | 点検 | 点検した結果、異状がなかった |
| × | 交換 | 部品・油脂・液類を交換した |
| △ | 修理 | 摩耗・損傷などのため部品を修復した |
| A | 調整 | 遊び・すき間・角度を基準値に戻した。スキャンツール等による機能調整を含む |
| T | 締付 | 緩んだ箇所を増し締めした |
| C | 清掃 | 粉塵・油などの汚れを除去した |
| L | 給油 | 油脂・液類を補給した |
| P | 省略 | 点検基準の規定により省略できる項目を省略した |
| / | 該当なし | 該当する装置が装着されていない |
よくある誤解にご注意ください。「×は不良」「△は要観察」「Pは修理・分解」といった説明が一般向けの記事で広く見られますが、いずれも誤りです。×は交換、△は修理、Pは省略です。中古車の記録簿を読む場面でも、この違いを取り違えると車両の状態を正反対に評価してしまいます。
特定整備を伴った場合
特定整備を行った項目については、チェック記号を○で囲みます。記録簿の様式に「特定整備 ○」の凡例があるのはこのためです。
整備の概要欄
整備の概要欄には、交換した部品名や測定結果(ブレーキパッドの厚さなど)を記載します。記号だけでは伝わらない情報を残す欄なので、次回入庫時に役立つ形で書いておくと自社の資産になります。
別表の対応と保存期間
点検整備記録簿の様式は、自動車点検基準の別表によって分かれています。どの別表を使うかは車両の種別と用途で決まります。
| 別表 | 対象 | 点検周期 | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 別表第三 | 事業用自動車・自家用大型等(被牽引を除く) | 3か月・12か月 | 1年 |
| 別表第四 | 被牽引自動車(トレーラー) | 3か月・12か月 | 1年 |
| 別表第五 | 自家用貨物・レンタカー等(二輪を除く) | 6か月・12か月 | 1年 |
| 別表第六 | 自家用乗用車・軽自動車(二輪を除く) | 12か月・24か月 | 2年 |
| 別表第七 | 自家用の二輪自動車 | 12か月・24か月 | 2年 |
一般的な整備工場で最も多く扱うのは別表第六です。なお、保存期間は車種名ではなく点検周期によって決まります。3か月・6か月点検の対象は1年、12か月・24か月点検の対象は2年です。
別表第一・第二は日常点検基準、別表第八は勧告基準であり、定期点検の記録簿様式ではありません。
記録簿の3分類
| 記録簿 | 作成主体 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 点検整備記録簿 | 使用者(実務は依頼を受けた整備工場) | 1年または2年 |
| 特定整備記録簿 | 自動車特定整備事業者 | 2年 |
| 指定整備記録簿 | 指定自動車整備事業者 | 2年 |
記載事項
点検整備記録簿には、登録番号または車両番号もしくは車台番号、点検時の総走行距離、実施者の氏名・名称および住所を記載します(使用者本人が実施した場合は住所の記載は不要)。
電子データでの作成・保存はできるのか
点検整備記録簿・特定整備記録簿・指定整備記録簿は、国土交通省が示す取扱いに従えば電磁的方法での作成・保存・交付ができます。求められる主な要件は次のとおりです。
- 記録を検索できる措置が講じられていること
- 他の媒体へ移行できる措置が講じられていること
- 作成・保存・更新・消去の日時と更新箇所と作業者が自動記録されること
- 施錠等による改ざん防止措置
- バックアップがあること
- 自動車検査員・整備主任者・起票入力の各権限をID/パスワードで分離し、ID共用をしないこと。管理規程と操作マニュアルの整備
完全なペーパーレスにはなりません。運輸支局や軽自動車検査協会の窓口で検査を受ける際に提示する場合は、書面での提示が必要です。また、クラウド保存は法第49条第1項の「備え置き」に該当しますが、バッテリー切れや操作に不慣れなことで直ちに表示できなければ点検整備未実施として扱われる点にも注意が必要です。
特定整備記録簿の写しを電子交付する場合は、事前に交付方法を示して書面または電磁的方法による承諾を得る必要があります。承諾が撤回されたら電子交付はできません。閲覧・表示・書面作成の方法を教示する義務もあります。
手書きからシステム作成へ切り替えると何が変わるか
- 記号の凡例に沿った記載が機械的に揃い、書き手による差がなくなる
- 車検証の内容をもとにシステムが判定するため、複雑化した検査基準への対応漏れが減る
- 記入漏れや基準値違反の数値を警告できる
- 白紙のA3・A4に印刷でき、専用用紙の在庫管理が不要になる
- 社内保管をPDFデータで行える(上記の電磁的保存の要件を満たす運用が前提)
- 過去の記録簿を検索して呼び出せる
パソコンやタブレットで指定整備記録簿を作成できる仕組みなら、指定車検・持ち込み車検・定期点検・分解整備に対応し、別表第三から第七まで全対応の様式を扱えます。実際の記録簿とほぼ同じレイアウトで入力できるものを選ぶと、手書きに慣れた整備士がそのまま移行できます。
まとめ
記録簿の記号は、ネット上の解説をそのまま信じると誤ります。×=交換、△=修理、P=省略という一次資料に基づく理解を社内で共有しておくことが、正しい記載の第一歩です。そのうえで、記載の揺れやチェック漏れをシステム側で防げるようにすると、作成時間そのものを短縮できます。
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