自動車整備ソフト(整備システム)は、一度導入すると5年、10年と使い続けることが珍しくありません。日々の伝票発行から車検案内、請求までを預ける道具ですから、選定を誤ると業務の形そのものが縛られてしまいます。
ここでは、整備システムを比較するときに実務で効いてくる10のチェックポイントと、見落としやすい費用の内訳を整理します。
費用は「月額」ではなく「総額」で比べる
各社のサイトに出ている月額料金だけを並べても、実際に払う金額の順位は変わることがよくあります。次の項目を足したうえで比べてください。
| 初期費用 | 導入時の設定作業、既存の顧客・車両データの登録代行など。 |
|---|---|
| インストール作業料 | サーバー機・クライアント機の台数によって変わります。事務所のパソコンが3台なら3台分かかるのが一般的です。 |
| 更新料・保守料 | 年額でかかる場合があります。契約に含まれるのか別途なのかを確認します。 |
| データオプション | 日整連作業点数データ、諸元データ、純正部品価格データ、新車価格カタログデータなど。標準搭載かオプションかで金額が大きく変わります。 |
| クライアント追加費用 | 同時に使うパソコンを増やしたときの追加料金。将来増える前提で確認しておきます。 |
| データ移行費用 | 他社ソフトからの乗り換え時。形式によっては手作業になり高額化します。 |
| 解約時の費用 | データをCSVで出してもらう際に費用がかかる場合があります。 |
比較すべき10のチェックポイント
1. 契約形態(リースか、レンタル・月払いか)
リース契約は途中解約が難しく、機能に不満が出ても数年動けません。整備システムをリースなしで導入したい場合は、レンタル契約や月払い契約に対応しているかを最初に確認します。プラン変更の可否(下位版から上位版への差額変更など)も併せて聞いておくと安心です。
2. 導入形態(インストール型かクラウド型か)
クラウド型は端末を選ばず使える一方、通信が切れると業務が止まります。インストール型は工場内で完結するため通信障害に強く、代わりに外出先からの参照には別の仕組みが必要です。どちらが優れているかではなく、自社の通信環境と業務の止まり方の許容度で決める話です。
3. 外出先から車歴を見られるか
引き取り・納車・出張整備が多い工場では、外から整備履歴を確認できるかどうかで日々の手間が変わります。閲覧専用か編集もできるか、専用アプリが必要かも確認しましょう。
4. 解約時にデータを持ち出せるか
最重要項目のひとつです。顧客・車両・伝票のデータをCSVで出力できるか、その費用はいくらか。ここが塞がっていると、実質的に乗り換えられなくなります。導入前に必ず確認してください。
5. 搭載データベースの種類
日整連作業点数データがあれば見積作成が速くなり、諸元データがあれば車両情報の入力が減ります。純正部品価格データや新車価格カタログデータは、扱う業務によって必要性が変わります。標準かオプションかを区別して確認します。
6. 出力できる帳票・申請書類
継続検査申請書、重量税納付書、自動車検査票、主要諸元表、OCR専用2、専用3号、指定整備記録簿、点検整備記録簿——自社で日常的に書いている書類がシステムから出せるかを、実際の帳票名で突き合わせます。1枚でも手書きが残ると、その書類のためだけに別の運用が残ってしまいます。
7. 業務範囲(整備だけか、車販・鈑金まで含むか)
整備に加えて中古車販売も手がけるなら、車輌見積契約・仕入管理・在庫管理・粗利管理ができる車両販売システム(車販ソフト)まで含んだ構成のほうが、顧客データの二重入力を避けられます。鈑金見積システムとの連動が必要な工場もあります。
8. 法改正・制度変更への対応
自動車業界は制度変更が多い分野です。OSS(ワンストップサービス)、電子車検証、インボイス制度、OBD検査など、対応が必要になったときにアップデートが提供されるのか、追加費用がかかるのかを確認します。契約期間中は最新システムと最新データが無料提供される形が、費用の見通しは立てやすくなります。
9. サポート体制
電話のみか、リモート操作に対応するか、訪問はあるか。リモートソフトによる遠隔操作に対応していると、同じ画面を見ながら説明を受けられるため、電話だけでは伝わりにくい操作も短時間で解決します。訪問を待つ必要がないのも利点です。対応時間帯(土曜対応の有無など)も自社の営業日と合っているか確認しましょう。
10. 他社ソフトからのデータ移行
乗り換えの場合、現在使っているソフト名と、そこから出せるデータ形式を伝えたうえで、どこまで引き継げるかを見積もってもらいます。顧客と車両は移せても整備履歴は移せない、というケースもあります。
規模別の考え方
| 整備士1~数名 | 必要な帳票が出せること、操作が簡単で新人にも教えやすいことが優先。多機能より、毎日使う機能の使い勝手で選びます。初期投資を抑えられるレンタル契約が向きます。 |
|---|---|
| 5~20名規模 | 同時に使う端末数と追加費用が効いてきます。フロント・整備・事務で同時に使う前提で見積もりを取ります。外出先からの車歴閲覧の価値も大きくなります。 |
| 整備+車販 | 整備ソフトと車販ソフトを別々に持つと顧客データが二重になります。1つでカバーできる構成を優先します。 |
無料の整備ソフトはどうか
無料または買い切りのソフトは費用面では魅力的ですが、次の点に注意が必要です。
- 法改正や様式変更があったときに更新されるとは限らない
- 不具合時に問い合わせる先がない、または回答に時間がかかる
- 提供が終了したときにデータを取り出せない可能性がある
- 日整連点数などのデータベースを自前で用意する必要がある
車検や点検の記録は法令上の保存義務がかかるものを含みます。数年後にデータが取り出せない事態は避けたいところです。試用や小規模での利用にとどめ、本格運用は継続的に更新される製品を選ぶのが無難です。
まとめ
整備システムの比較は「機能の数」ではなく、総額・データの持ち出し・帳票の網羅・サポートの4点をまず押さえると判断しやすくなります。そのうえで、自社が伸ばしたい業務(車販、鈑金、外出対応など)に合う機能があるかを見ていけば、選定はかなり絞り込めます。
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